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2009年度購入作品
ことほぎ
ことほぎ 伊藤 なおみ 日本画 60.6cm×50cm
 花は散る時、地面へ花弁を落とす。写生しているとよく居合わせる場面で、花の咲く季節の終わり、老衰、死を思う。しかし、桜の場合、花房に風が吹いて、花弁が一旦空に上がったあと降ってくる、という散り方を見ても、あまりそのような考えは私の頭に浮かばない。木にくっついている花弁の数は減っているに違いないが、きりがなく、真昼の乾いた空へ舞い上がり降り注ぐ光景は清清しく、むしろおめでたいような喜び祝う時の感情を想起させた。「ことほぎ」は「言葉による祝福」の意である。桜のつくる光景からは花が咲く度にただ土と水と光と空気で生きる植物の不思議と意外な強さ、おだやかな生命が感じられ、強くひきつけられる。絵で表現するのは難しいが、その晴れやかさ清浄さを感じられるものにしたかった。小さな花が多数寄り集まると感じる強かさと、桜の繊細さを出したいと思い、線描を重ねた。
 古くから描かれ、親しまれてきた桜の画題は名品も数多く、様々な描き方、捉え方がされてきた。遠くから離れて見ると霞や靄に見えることは、どのようにでも描けそうな表現の可能性があることと思えるが、それだけに簡単には解決し難い深みを持った対象でもある。
 より深いところまで表現することができるようこれからも描きたい画題である。
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