NISAのつみたて投資枠は一括投資(スポット購入)できる?タイミングや注意点

ボーナスなどの臨時収入を活用して、運用しているつみたて投資枠に追加投資をしたいと考えている方もいるのではないでしょうか。しかし、つみたて投資枠では積立投資のみが認められており、一括投資はできません。一括での購入を希望する場合は、成長投資枠の活用が必要です。
とはいえ、一括投資には、購入タイミングの難しさや価格下落によるリスクといった注意点もあります。無理なく余剰資金を運用するには、つみたて投資枠での増額設定といった他の手段も選択肢にいれるとよいでしょう。
大切な資産を上手に活用するためにも、一括投資のメリットだけでなくデメリットや注意点を理解し、ご自身にあった投資手法を選択できるようにしましょう。
- NISAのつみたて投資枠では一括投資ができない理由
- NISAの 「一括投資」と「積立投資」に向いている方の特徴
- 成長投資枠で一括投資をする際のメリット・デメリット
目次
OPENNISAのつみたて投資枠は一括投資(スポット購入)できない
一括投資とは、まとまった金額を任意のタイミングで買い付ける方法のことです。相場が下がったときに多めに購入したい場合や、ボーナスなどの臨時収入を一気に投資したい場合などに選ばれる手法です。
しかし、つみたて投資枠では、一括投資はできません。
つみたて投資枠では、安定的な資産形成を行うことを目的としているため、毎月決まった金額を積み立てていく「積立投資」のみが認められています。
NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の違い
NISAには2つの非課税枠があり、一括投資に対応しているのは「成長投資枠」です。
つみたて投資枠と成長投資枠は、投資方法だけでなく、年間投資枠や投資対象商品にも違いがあるため、2つの枠の違いを改めて確認しておきましょう。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
---|---|---|
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有限度額 |
1,800万円 (うち成長投資枠が1,200万円) (簿価残高方式で管理) |
|
投資対象商品 |
長期の積立・分散 投資に適した 一定の投資信託 |
上場株式・投資信託 など |
購入方法 | 積立投資 |
積立投資 または 一括投資 |
成長投資枠は「一括投資(スポット購入)」と「積立投資」を選べる
成長投資枠では「積立投資」だけでなく、「一括投資」も選択できます。
たとえば、普段は積立投資を行いつつ、相場が大きく下落したときや、余裕資金ができたときなど、任意のタイミングで追加投資することも可能です。
つみたて投資枠では「増額設定」が可能
つみたて投資枠では、一括投資ができませんが、毎月の積立金額を一時的または継続的に増やす「増額設定」を活用できます。
増額設定を活用することで、収入に余裕ができたときや資産形成の目標が変わったときなどに、通常より大きな金額を積み立てることが可能です。あくまで積立であるため一括買付とは異なりますが、余剰資金を活用できる手段のひとつです。ただし、つみたて投資枠には年間120万円の投資上限があるため、月あたりの積立設定額は最大10万円となります。
つみたて投資枠の増額方法やメリット、タイミングなどは、こちらを参考にしてください。
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つみたて投資枠の積立金額を増額する方法|タイミングやデメリットも解説
つみたて投資枠と成長投資枠は併用できる
NISAのつみたて投資枠と成長投資枠は、併用できます。
たとえば、つみたて投資枠で毎月積立投資をしながら、まとまった資金は成長投資枠で一括投資するなど、目的や資金状況に応じた使い分けも可能です。
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つみたて投資枠と成長投資枠の違いとは?上手に活用するポイントも紹介
NISAの「一括投資(スポット購入)」と「積立投資」はどっちがおすすめ?
NISA口座では、利用する非課税枠に応じて投資方法が異なります。
つみたて投資枠で選べる投資手法は「積立投資」のみですが、成長投資枠は「一括投資」と「積立投資」のどちらにも対応しています。
ただし、実際にどちらがおすすめかは、資金の状況や投資スタイル、投資経験などによって異なります。
投資に慣れた方がまとまった資金を投資するなら「一括投資(スポット購入)」
一時的にまとまった資金がある方や、相場を見て戦略的に投資をしたい方は、成長投資枠を活用した一括投資が向いているといえるでしょう。
ご自身で購入タイミングを決められるため、相場の下落時など「買いどき」と感じた瞬間に投資を行うことが可能です。
ただし、投資のタイミングによってリターンが大きく変動するため、市場の動きに対する判断力に自信がある方や、投資経験が豊富な方に適した投資手法といえます。
投資初心者の方が安定的に資産を増やすなら「積立投資」
安定的に資産を形成したい方や、投資を無理なく続けたい方には、積立投資がおすすめです。
「一定金額」を「定期的に」買い付け続ける積立投資を行うことで、購入価格が平準化され、値動きの影響を抑える効果が期待できます。さらに、運用期間が長くなるほどリスクが分散され、収益が安定しやすくなります。
一方、一括投資は投資したタイミングによって大きく利益が出ることもあれば、損失が出ることもあることを理解しておきましょう。

また、積立投資なら月1,000円程度の少額からでもスタートできるため、初心者の方でも始めやすいこともメリットのひとつです。
NISAの成長投資枠で一括投資(スポット購入)するメリット
NISAの成長投資枠で一括投資する場合のメリットは、次のとおりです。
- 購入タイミングをご自身で決められる
- まとまった資金を一括で投資できる
- 個別株やETFなど幅広い商品を選べる
購入タイミングをご自身で決められる
一括投資のメリットのひとつは、購入のタイミングをご自身で選べることです。
市場が大きく下落したときや、狙っていた銘柄が割安になったときなど、ご自身の判断でタイミングを見極めて投資できます。
うまくタイミングを見極めて一括投資できれば、その後の値上がりによる利益が期待できるでしょう。ただし、タイミングによっては損失が出るリスクもあるため、慎重な判断が求められます。
まとまった資金を一括で投資できる
成長投資枠では、年間投資枠240万円の範囲内であれば、任意の金額を、任意のタイミングで投資できます。
NISA口座での運用であれば売却益や配当金が非課税になるため、税負担を抑えて効率的に運用でき、ボーナスなどのまとまった資金を活用しやすいでしょう。一方、課税口座で投資をすると、売却益や配当金に約20%の税金がかかります。

個別株やETFなど幅広い商品を選べる
成長投資枠では、投資信託に加えて、個別株(企業の株式)やETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)など、多彩な金融商品を購入できます。ご自身の投資スタイルやリスク許容度に応じて商品を選べる自由度の高さも魅力のひとつです。
たとえば、将来性のある企業の株式を買って値上がりを狙うことや、REITを通じて不動産投資に近い運用を行いながら、配当収入を得ることも可能です。
ただし、銀行や信用金庫など一部金融機関では、個別株やETF、REITを扱っていないこともあるため、サービス内容を事前に確認しておきましょう。
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NISAの成長投資枠で一括投資(スポット購入)するデメリット
NISAの成長投資枠での一括投資には、次のようなデメリットもあります。
- 購入タイミングの見極めが難しい
- 相場下落時のリスクが大きい
- ドル・コスト平均法の恩恵を受けにくい
特に資産運用に慣れていない方は、デメリットを確認したうえで慎重に判断することが大切です。
購入タイミングの見極めが難しい
一括投資は、ご自身で購入のタイミングを決められる点が特徴で、自由度の高い投資方法です。しかし、タイミングの見極めが難しいというデメリットもあります。
たとえば「今が買いどき」と判断して投資した直後に相場が下落すれば、「もう少し待てばよかった…」と後悔する可能性もあります。また、「本当に相場が上昇するのだろうか」と不安を感じることもあるでしょう。こうした不安や迷いが、投資判断に影響を与えるリスクもあります。
特に投資初心者の方の場合は、相場の動きに影響されて「上がっているから買わなければ」「下がっているから怖い」と感情で動いてしまうこともあり、冷静な判断が難しくなることがあります。
相場下落時のリスクが大きい
一括でまとまった金額を投資した場合、購入後に相場が大きく下落すると、その影響も大きくなります。
たとえば、投資直後に株価が下がれば、含み損が一気に膨らむ可能性もあり、不安を感じやすくなるでしょう。
ただし、短期的な下落リスクは避けにくいものの、長期で保有することで回復する可能性もあります。
そのため、一括投資を行う際には、価格の変動に一喜一憂せず、長期的な視点で資産の成長を見守る姿勢も大切です。
ドル・コスト平均法の恩恵を受けにくい
積立投資では、毎月一定額を購入することで、「ドル・コスト平均法」の効果が得られます。ドル・コスト平均法とは、一定金額を定期的に購入することで、価格が高いときには少なく、安いときには多く買うしくみで、購入単価が平準化され、リスク分散につながる投資手法です。
一方、一括投資では購入時の価格で全額を投じるため、価格変動の影響をそのまま受けることになります。投資直後に相場が下落した場合は、一度に大きな損失を抱えるリスクがあります。
一括投資はタイミングが合えば大きなリターンも狙える反面、積立投資のように価格変動リスクを平準化する効果は得られにくい点には注意が必要です。
成長投資枠で一括投資(スポット購入)するタイミング
成長投資枠で一括投資を検討するタイミングは、相場が大きく下落し、その後の上昇が見込まれるときが理想的です。一般的に、投資では価格が安いときに購入し、値上がりしたときに売却することで、売却益が得られます。
ただし、投資のタイミングを正確に見極めるのは難しく、判断を誤ると損失につながるリスクもあるため注意が必要です。
NISAの成長投資枠での一括投資に不安がある場合は、無理に一括で投資せず、つみたて投資枠を使ってコツコツと積み立てていくのも有力な選択肢です。

ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)
金子賢司
成長投資枠の年間投資枠は年間240万円と大きいですが、短期的な売買を繰り返すと、すぐに使い切ってしまうため注意が必要です。一括投資は、あくまで長期運用を補う目的で活用しましょう。
NISAの成長投資枠で一括投資(スポット購入)する手順
成長投資枠で一括投資を行う一般的な方法を紹介します。なお、実際に買い付けが成立する約定タイミングは、金融機関や投資対象商品、注文タイミングなどによって異なります。
- 証券総合取引口座にログインする
- 投資信託注文画面で「購入」を選択する
- 成長投資枠の対象銘柄より、購入する銘柄を選ぶ
- 購入金額または口数、口座区分(NISA成長投資枠)を入力する
- 手数料や引出口座を確認する
- 注文確定する
NISAの成長投資枠で一括投資(スポット購入)する際の注意点
成長投資枠で一括投資する際は、次の点に注意しましょう
- 年間投資枠の上限を確認する
- 配当金の受取方法に注意する
- 短期的な値動きに惑わされない
年間投資枠の上限を確認する
成長投資枠の年間投資枠は240万円です。
一括投資で年間投資枠を使い切ってしまうと、その年は追加で非課税投資ができなくなります。投資タイミングや金額を決める際は、年間投資枠を意識して計画的に活用しましょう。
配当金の受取方法に注意する
成長投資枠で株式やETFに投資すると、配当金や分配金を受け取れることがありますが、受取方法によっては課税されてしまう可能性もあるため注意が必要です。
配当金を非課税で受け取るには「株式数比例配分方式」を選択しておく必要があります。これ以外の設定では、NISA口座で購入した株式の配当金やETFの分配金であっても課税対象となります。
配当金や分配金を目的に成長投資枠で一括投資する場合は、設定内容をあらかじめ確認しておきましょう。
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短期的な値動きに惑わされない
一括投資を行った直後に相場が下落して含み損が出ると「投資判断を誤ったのでは」とタイミングや銘柄選定に不安を感じることもあるでしょう。
しかし、投資は短期的な値動きがあるのが一般的であり、一時的な損益に一喜一憂せず、長期的な視点で運用を続けることが大切です。
NISAは「長期・積立・分散投資」を基本として資産形成を目指す制度ですが、一括投資であっても長期的に保有することで、時間を味方につけた運用が期待できます。
また、成長投資枠を活用して一括投資を行う場合は、メリットだけでなくリスクも理解したうえで、「いつまでに、いくらに増やしたいか」といった目的や、ご自身のリスク許容度をふまえて、投資金額を決めることが重要です。
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NISAや資産運用に関する相談は京都銀行へ
投資初心者の方にとっては、商品選びや投資金額、投資のタイミングなど、さまざまな悩みや疑問が生じるものです。判断が難しいときは、相談しながら少しずつ知識を深めていくことも選択肢のひとつです。
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よくある質問
Q.NISAの一括投資(スポット購入)とは何ですか?
A.
一括投資とは、まとまった金額を任意のタイミングで一度に投資する方法です。NISAでは成長投資枠を利用することで一括投資できます。
Q.NISAの一括投資(スポット購入)と積立投資は併用できますか?
A.
NISAの成長投資枠では、一括投資と積立購入ができます。また、つみたて投資枠で積立投資、成長投資枠で一括投資といった併用も可能です。
Q.NISAで一括投資(スポット購入)した分の一部を売却することはできますか?
A.
一括で購入した商品も、必要に応じて一部を売却することが可能です。ただし、売却のタイミングによっては損益が大きく変動することがあるため注意が必要です。
NISAの売却タイミングや注意点については、次の記事を参考にしてください。
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ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)
金子賢司
成長投資枠は、自身の判断で買付時期や買付金額(一定額まで)を選べるため、使い方次第では、つみたて投資枠のみで運用するよりも効率的にリターンが狙えます。ただし、その分リスクが伴う点もご確認ください。