円安はつみたて投資枠での運用にどう影響する?始めるタイミングや運用時の注意点

更新日:2025/05/31
円安はつみたて投資枠での運用にどう影響する?始めるタイミングや運用時の注意点

近年、円安が進んでいることから、つみたて投資枠での運用を検討している方の中には、「円安の今、投資を始めて大丈夫なのか」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、円安・円高がつみたて投資枠での運用に与える影響や、為替変動に左右されにくい運用のポイントについて、初心者の方にもわかりやすく解説します。

この記事で分かること
  • 円安・円高の意味
  • 円安・円高のメリットとデメリット
  • 為替変動がつみたて投資枠での運用に与える影響
監修者
金子賢司(かねこけんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)
金子賢司

要人発言や経済指標の発表などをきっかけに為替レートが急変することもあるため、将来の為替を正確に予測するのは困難です。為替変動リスクがある商品は、長期・積立・分散での運用のリスクを抑えて運用しましょう。

目次

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円安・円高とは

円安・円高とは

円安・円高とは、他の通貨と比較して円の価値が高いか低いかを示す概念です。通貨の価値は日々変動しており、「1ドルがいくらになったら円高(円安)」といった明確な基準はありません。

異なる通貨を交換することを「外国為替取引」と呼び、その交換比率を「為替レート」または「外国為替相場」といいます。為替レートは各国の経済状況や金利の変動など、さまざまな要因で日々変動しています。

円安とは:他の通貨と比較して円の価値が低い状態

円安とは、他の通貨と比較して円の価値が低い状態を指します。たとえば、1ドル=150円だった為替レートが、1ドル=170円になった場合、1ドルを購入するために必要な円が20円増えています。このように、円の価値が下がった(同じ1ドルを得るのに多くの円が必要になった)状態が「円安」です。

円安には、次のメリット・デメリットがあります。

円安のメリット

  • 日本製品が海外で高く売れる
  • 海外資産の価値が上がる

円安のデメリット

  • 輸入商品の価格が高くなる
  • 海外旅行や留学費用が割高になる

円高とは:他の通貨と比較して円の価値が高い状態

円高は、他の通貨と比べて円の価値が高い状態を指します。たとえば、1ドル=150円だった為替レートが、1ドル=130円になった場合、ドルを買うために必要な円が20円少なくなります。このように、円の価値が上がった(同じ1ドルを得るのに少ない円で済むようになった)状態を「円高」と呼びます。

円高になると、次のメリット・デメリットがあります。

円高のメリット

  • 輸入商品の価格が安くなる
  • 海外旅行や留学費用を抑えられる

円高のデメリット

  • 日本製品が海外で売れにくくなる
  • 海外資産の価値が下がる

米ドル/円の為替レートの推移(2020年1月〜2024年12月)

為替レートは一定ではなく、日々変動しています。2022年2月以降に急速に円安が進み、2022年10月には1ドル約148円、2023年1月に一時1ドル約130円まで円高となりましたが、その後再び円安傾向が続いています。

特に円高に推移したのは2021年1月で1ドル約102円、反対に円安に推移したのは2024年6〜7月で1ドル約160円でした。この4年間で約60円もの変動があったことがわかります。

米ドル/円の為替レートの推移(2020年1月〜2024年12月)

円安・円高はつみたて投資枠での運用にどう影響する?

つみたて投資枠での運用において、円安・円高は次のような影響を与えます。

  • 積立時:同じ金額で購入できる投資信託の口数が変わる
  • 売却時:円安で円換算での資産が増える可能性がある
  • 売却時:円高で円換算での資産が減少する可能性がある

それぞれ詳しく確認してみましょう。

積立時:同じ金額で購入できる投資信託の口数が変わる

つみたて投資枠では、一定の金額を定期的に積み立てる投資手法を利用します。積立時の購入口数はその時点の基準価額によって決まりますが、この基準価額には為替の影響が反映されます。

たとえば、投資対象が米国株式インデックスなどの場合、為替レートが変動すると円換算後の基準価額も変動することがあります。その結果、同じ金額で購入できる口数が変わることもあるのです。

売却時:円安で円換算での資産が増える可能性がある

通常、海外株式などに投資をする場合は、「購入時は円高」「売却時は円安」の状態が有利になります。たとえば、1ドル=120円のときに100万円分の米国株を購入し、1ドル=150円に円安が進んだタイミングで米国株を売却すると、為替レートの影響だけを見れば、円に換算した場合の価値は約125万円になります。

ただし、為替レートの変動は資産価値に影響を与える要因の一つに過ぎません。実際には投資先の株価の変動等も資産額に大きく影響します。購入時より円安となっている場合でも、投資対象の株価が大きく下落していると、基準価額が下落し、円換算額での資産が増えにくい場合もあります。

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売却時:円高で円換算での資産が減少する可能性がある

売却時に購入時よりも円高になっている場合、円換算で資産が減少する可能性があります。たとえば、1ドル=120円のときに100万円分の米国株を購入し、1ドル=100円に円高が進んだタイミングで米国株を売却すると、為替レートの影響だけを見れば、円に換算した場合の価値は約83万円になります。

ただし、資産価値の変動は為替レートだけでなく、投資先の株価の変動等にも影響されます。投資先の業績が好調で、長期的に見て株価が上昇している場合、たとえ円高であっても基準価額が上昇し、資産価値が増加することも考えられます。また、為替レートは常に変動しているため、売却を急がず待っていれば円安になる可能性も十分にあるでしょう。

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監修者
金子賢司(かねこけんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)
金子賢司

一般的に、海外株式などは国内株式よりもリスク・リターンが高い傾向にあります。その理由の一つとして挙げられるのが、為替変動リスクです。

つみたて投資枠での運用は円安・円高に関係なく始めてOK

つみたて投資枠での運用を検討している場合、「円安・円高どちらが始めどきか」と気になる方も多いでしょう。結論としては、つみたて投資枠での運用は円安・円高に関係なく、思い立ったときが始めどきです。

理由は次のとおりです。

  • ドル・コスト平均法で為替変動の影響を抑えられる
  • タイミングより長期的に積み立てることが重要
  • 投資する地域を分散できる
  • 円高でも利益が期待できる

それぞれ詳しく解説していきます。

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理由1:ドル・コスト平均法で為替変動の影響を抑えられる

つみたて投資枠では、定期的に一定額を投資する「ドル・コスト平均法」を活用した投資が行われます。この方法は、購入価格が安いときには多く、購入価格が高いときには少なく購入する仕組みです。

ドル・コスト平均法で為替変動の影響を抑えられる

これにより、高値と安値の購入価格が平準化され、為替変動や株価変動のリスクを長期的に抑える効果が期待できます。また、円高や株価の下落時に多くの商品を購入できるため、平均購入単価が下がり、再び円安や株価が上昇した際に利益を出しやすくなるのも特徴です。

理由2:タイミングより長期的に積み立てることが重要

為替は常に変動しており、将来の動きを予測することはプロの投資家でも難しいものです。ここ数年は円安状態が続いていますが、10年後に円高になっている可能性もあれば、さらに円安が進んでいる可能性もあります。

つみたて投資枠では、10年、20年など長期的に積立投資を行うことで、リスクを抑えながら資産形成が可能です。特定のタイミングを狙って投資するよりも、思い立ったときに早めに投資を始めて、コツコツ積み立てを続けていくことが重要となります。

理由3:投資する地域を分散できる

つみたて投資枠では、投資信託や一部のETFを通じてさまざまな地域の資産に分散投資が可能です。たとえば、全世界株式インデックス(オール・カントリー)では、複数の国に分散投資をすることで、為替変動リスクを抑える効果があります。

株価変動だけでなく為替変動リスクも分散されるため、長期的にバランスを保ちながら資産を成長させることが期待できます。分散投資を行うことで、為替変動による一時的な影響を緩和できるため、相対的なリスクの低減につながります。

理由4:円高でも利益が期待できる

投資信託の運用成果は、為替レートの影響だけでなく、投資対象商品や市場の動きにも影響を受けます。

長期投資を続ける間に投資先の業績が好調で基準価額が上昇していれば、為替変動による影響をカバー、または上回るリターンが期待できます。

つみたて投資枠を利用するなら、早めに投資を始め、長期的な視点で運用を続けることが重要です。

運用中に円高となった場合の心構え

つみたて投資枠での運用をしている際に、円高となった場合に注意しなければならないのは次の2点です。

  • すべての資産を外貨資産に投資するのは避ける
  • 損失が出ていても売却をあせらない

すべての資産を外貨資産に投資するのは避ける

円高だからといって、すべての資産を外貨資産に投資することは避けましょう。海外株式などは、円高で購入し円安で売却すれば利益が出る可能性がありますが、さらに円高が進んだり相場が下落したりするリスクも存在します。

為替レートは日々変動しており、将来の動向を予想するのは困難です。予想できないからこそ、すべての資産を特定の外貨資産に投資したり、生活費まで投資したりすることは避けるべきです。生活費や直近必要になる資金を確保しつつ、投資はあくまでも余剰資金で、複数の資産や地域に分散投資することが大切です。

損失が出ていても売却をあせらない

つみたて投資枠での運用では、一時的な為替レートの変動に一喜一憂せず、長期的な視点を持つことが重要です。為替変動や株価の下落により保有商品の基準価額が下がっても、あせって売却することは避けましょう。

相場変動により基準価額が下がることもありますが、急を要する資金でない場合は長期目線で相場の回復を待つことが賢明な場合もあります。

NISAのつみたて投資枠を含む投資の相談は京都銀行へ

つみたて投資枠での投資を始めたい方や運用方法に迷っている方など、投資に関する不安は専門家に相談することがおすすめです。京都銀行では、NISAのつみたて投資枠をはじめとする資産運用や保険、各種ローンなどの相談が可能です。

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つみたて投資枠と円安に関するよくある質問

Q.円安はつみたて投資枠での運用にどう影響しますか?

A.

同じ金額でつみたて投資枠の対象商品を購入する場合、投資対象が外国資産だと、円安によって基準価額が上昇し、同じ積立金額で購入できる口数が少なくなることがあります。一方、売却時に円安が進んでいる場合、円換算での資産額が増える可能性があります。

円安・円高はつみたて投資枠での運用にどう影響する?

Q.つみたて投資枠での運用を始めるなら円安・円高のどちらが有利ですか?

A.

つみたて投資枠での運用は円安・円高に関係なく、早めに始めることがおすすめです。つみたて投資枠は、定期的に積み立てるドル・コスト平均法を活用しているため、円安・円高のタイミングを図る必要性は低くなっています。長期的に積み立てを続ければ、為替レートの変動による影響が平準化されるため、どちらで始めても大きな差は生じにくいといえます。