NISA口座を相続する前に知っておきたい注意点|手続きの流れと相続税の計算方法

更新日:2026/03/20
NISA口座を相続する前に知っておきたい注意点|手続きの流れと相続税の計算方法

NISA口座を利用している方が亡くなった際、NISA口座内の資産は名義変更による引継ぎはできません。NISA口座の資産を引き継ぐためには、相続の手続きが必要です。また、課税口座に資産を移した場合は相続後の運用益には税金がかかる点にも注意が必要です。

大切な資産を適切に引き継ぐために、相続のルールや手続きの流れを事前に理解しておきましょう。

この記事で分かること
  • NISA口座の相続手続きの流れと必要書類
  • 相続時の注意点(名義変更の可否、税金の扱いなど)
  • NISA口座を相続した際の相続税の計算方法と評価方法
監修者
金子賢司(かねこけんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)
金子賢司

NISA口座の名義人が亡くなった場合、相続人は非課税のまま資産を引き継ぐことができません。相続後の運用益には税金がかかるため、手続きの流れや課税の仕組みを事前に把握し、スムーズに資産承継をしましょう。

目次

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NISA口座の名義人が亡くなったら相続手続きが必要

NISA口座の名義人が亡くなった際は、ご遺族の方は速やかに口座を開設している金融機関へ連絡し、相続の手続きを進める必要があります。

相続手続きを行うと、投資信託や上場株式といった保有資産は、一旦NISA口座から払い出されます。払い出された資産は、被相続人(亡くなられた方)の課税口座(特定口座または一般口座)へ一旦移され、そこから相続人の課税口座へと移管されるのが基本的な流れです。

NISA口座の名義人が亡くなったら相続手続きが必要

このとき、資産は亡くなられた日の終値に相当する金額で売却したものとみなされ、相続人はその時価で取得した扱いになります。

具体的にどのような手順で手続きを進めるかは「NISA口座の相続手続きの流れ」で詳しく解説します。

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特定口座・一般口座とは

特定口座と一般口座は、証券口座の種類です。NISA口座とは違い、どちらの口座も運用で得た利益に対して20.315%の税金が課されます。

それぞれの口座の大きな違いは、「銀行や証券会社などの金融機関が税務処理を代行してくれるかどうか」です。

特定口座・一般口座とは

証券口座を開設する際には、特定口座か一般口座のどちらかを選択できます。特定口座の「源泉徴収あり」を選択した場合、確定申告は不要です。また、特定口座の「源泉徴収なし」を選択した場合も、金融機関が1年間の取引内容をまとめた「年間取引報告書」を作成してくれるため、確定申告の手続きが容易になります。

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NISA口座を相続する前に知っておきたい注意点

NISA口座を相続する際には、事前に押さえておきたいポイントがいくつかあります。主な注意点は次のとおりです。

  • 名義変更による引き継ぎはできない
  • 移管先は被相続人と同じ金融機関の口座となる
  • 相続後の運用益には税金がかかる
  • 相続後にNISA口座で運用する場合は買い直しが必要
  • NISAの保有資産は相続税の課税対象

なお、これらの相続に関するルールは、「つみたてNISA」などの旧NISA制度でも同様です。

名義変更による引き継ぎはできない

NISA口座の名義人が亡くなった場合、口座の名義変更を行って相続人がそのまま非課税で資産を引き継ぐことはできません。前述したように、資産は相続人の課税口座へ移管されます。

また、被相続人のNISA口座から相続人のNISA口座へ直接資産を移すこともできません。

移管先は被相続人と同じ金融機関の口座となる

被相続人のNISA口座内の資産の移管先は、被相続人がNISA口座を開設していたのと同じ金融機関の口座でなければなりません

もし相続人が同じ金融機関に特定口座や一般口座を開設していない場合は、新たに口座を開設する手続きが必要です。

相続後の運用益には税金がかかる

NISA口座で運用していた資産は、相続発生日(名義人の死亡日)までに発生した運用益は非課税として扱われます。たとえば、名義人が100万円で購入した投資信託の評価額が、亡くなられた時点で120万円になっていた場合、運用益の20万円には税金がかかりません。

しかし、NISA口座の資産が相続人の特定口座または一般口座へ移管された後に新たに生じた運用益は課税対象です。売却する際には原則として20.315%の税金がかかります。

相続後の課税額を計算する際の基準は「取得日」と「取得価額」の2種類です。相続人が引き継いだ商品の取得日は「名義人が亡くなった日」、取得価額は「相続発生日の時価」が用いられます。

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相続後にNISA口座で運用する場合は買い直しが必要

相続した資産を再びNISAで運用したい場合は、被相続人のNISA口座からご自身(相続人)の特定口座・一般口座へ移管された資産を一度売却し、改めてご自身のNISA口座で買い直す必要があります

非課税のまま引き継がれない点には注意しましょう。

NISAの保有資産は相続税の課税対象

NISA口座で運用している株式や投資信託などの金融商品は、相続財産として扱われるため、相続税の課税対象です

相続税については、「NISA口座を相続した際の相続税」で詳しく解説します。

NISA口座の相続手続きの流れ

ここでは、京都銀行を例に、NISA口座での相続手続きの流れを紹介します。

NISA口座の相続手続きの流れ

1.金融機関に連絡する

最初に行うのは、被相続人がNISA口座を開設していた金融機関への連絡です。名義人が亡くなったことを伝え、相続手続きを始める旨を申し出ます。

連絡方法は金融機関によって異なりますが、主に次のような方法があります。

  • 電話
  • 店舗窓口
  • WEBによる届出

また、相続税を算出するには「残高証明書」が必要です。あらかじめ発行を依頼しておきましょう。残高証明書の発行には、残高証明書発行依頼書と発行手数料がかかります。

京都銀行の場合は、お取引店または最寄りの本支店窓口で残高証明書の発行を承っております。

2.金融機関から書類を受け取る

次に、金融機関から相続手続きに必要な書類一式を受け取ります。

必要な書類は、お取引の内容や相続の方法(遺言書の有無、遺産分割協議書の有無など)によって異なります。

3.必要書類を準備・提出する

金融機関から案内された書類を揃え、窓口または郵送で提出します。相続手続きで必要な書類は、主に次のとおりです。

必要書類の例

  • 非課税口座開設者死亡届出書
  • 相続手続依頼書
  • 被相続人の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
  • 相続人の戸籍謄本(または、認証文付き法定相続情報一覧図の写し)
  • 相続人の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書または遺言書

なお、金融機関や相続の状況によっては、これ以外にも追加の書類が求められる場合があります。

4.保有資産の移管手続きが行われる

提出した書類に不備がなければ、金融機関側で移管の手続きが進められます。移管には被相続人のNISA口座と同じ金融機関の証券口座が必要です。もし相続人が同じ金融機関に証券口座を持っていない場合は、開設手続きも並行して行いましょう。

証券口座が開設されると、NISA口座の資産はまず被相続人の一般口座または特定口座へ移され、その後、相続人の口座へと移管されます。

NISA口座を相続した際の相続税

NISA口座を相続した場合、その時点での保有資産は相続財産として扱われ、相続税の課税対象になります。

相続税の申告と納税は、相続の開始があったことを知った日(被相続人が亡くなった日)の翌日から10ヵ月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署で行う必要があります。

相続税の計算方法

相続税は、NISA口座の資産だけではなく、その他すべての相続財産の相続税評価額を合計し、基礎控除額を差し引いた金額に対して課税されます。

相続税評価額とは、相続税を計算するために相続財産を、相続税法で定められた評価方法に従って算出した金額のことです。

相続税の基礎控除は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算されます。税率は10〜55%で、相続する資産の金額に応じて税率が高くなる「超過累進課税」が適用されます。

たとえば、相続財産の総額が4,000万円、法定相続人が2人の場合でシミュレーションをしてみましょう。

基礎控除:3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円
課税対象額:4,000万円-4,200万円<0円

このように、相続財産の総額が基礎控除の範囲内であれば相続税は発生しません。一方で、相続財産の総額が4,000万円、法定相続人が1人(配偶者を除く)の場合は次のとおりです。

基礎控除:3,000万円+(600万円×1人)=3,600万円
課税対象額:4,000万円-3,600万円=400万円

課税対象額が1,000万円以下の税率は10%となり、この場合の相続税は400万円×10%=40万円となります。

NISA口座の保有資産にかかる相続税の評価方法

NISA口座内で保有している資産の相続税評価方法は、資産の種類によって異なります。それぞれ確認してみましょう。

上場株式等の評価方法

上場株式等(ETF・REITを含む)の評価額は、相続発生日時点の終値等に保有株式数をかけて次のように計算されます。

評価額 = 相続発生日時点の終値等 × 保有株式数

相続発生日時点の終値等は、原則として次の価額のうち最も低い価額が用いられます。

  • 相続発生日の終値
  • 相続発生月の終値の月平均
  • 相続発生月の前月の終値の月平均
  • 相続発生月の前々月の終値の月平均

投資信託の評価方法

投資信託の相続税評価額は、相続発生日に換金した場合の基準価額をもとに評価します。このとき、信託財産留保額や源泉徴収される税金がある場合は、それらを控除できます。

評価額の計算式は次のとおりです。

[日々決算型の投資信託(中期国債ファンド・MMFなど)]

評価額=1口当たりの基準価額 × 口数 + 再投資されていない未収分配金(A)
− Aにつき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額*
− 信託財産留保額及び解約手数料(消費税額に相当する額を含む。)

*特別徴収されるべき道府県民税相当額および復興特別所得税の額に相当する金額を含む

引用:国税庁「貸付信託・証券投資信託の評価」

[上記以外の証券投資信託]

課税時期の1口当たりの基準価額 × 口数
− 課税時期において解約請求等した場合に源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額
− 信託財産留保額及び解約手数料(消費税額に相当する額を含む。)

引用:国税庁「貸付信託・証券投資信託の評価」

なお、1万口当たりの基準価額が公表されている証券投資信託の場合、「課税時期の1口当たりの基準価額」を「課税時期の1万口当たりの基準価額」、「口数」を「口数を1万で除して求めた数」と読み替えて計算します。

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上場株式等は、4つの価格のうちもっとも低い価額で評価されるため、相続税の負担軽減につながる場合があります。

生前贈与とNISAを活用した資産の引き継ぎ方法

相続税の負担を軽くしたい場合には、「生前贈与」が効果的です。さらに、受贈者が贈与された資金をNISA口座で運用すれば、運用益を非課税にできます。

たとえば、親が子どもに資金を贈与し、子ども名義でNISA口座を開設して運用するケースで考えてみましょう。この場合、親は生前贈与で相続財産を減らすことができ、子どもは贈与された資金を非課税で運用できます。その結果、相続税の負担を抑えつつ、将来に向けた資産形成を進めることが可能です。

贈与には年間110万円までの基礎控除があり、この範囲内の贈与であれば贈与税はかかりません。ただし、相続発生前7年以内に行われた贈与については、贈与時の価額が相続財産に加算される点には注意が必要です。

生前贈与とNISAを活用した資産の引き継ぎ方法

無理のない金額で計画的に生前贈与を行い、NISAを活用することで、家族単位で効率よく資産を増やしていける可能性があります。

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NISA口座の相続に関するご相談は京都銀行へ

NISA口座を保有されている方が亡くなった場合、ご遺族の方は相続手続きを行う必要があります。さらに、NISA口座だけでなく、その他の保有資産がある場合はあわせて相続手続きが必要となります。

京都銀行の各店舗では、相続手続きや資産運用に関するご相談を承っております。平日お忙しい方は、「土・日ご相談プラザ」「土曜ご相談プラザ」をご活用ください。

選べる2つの開設方法

NISAの相続に関するよくあるご質問

Q.NISA口座の名義人が死亡した場合、非課税枠はどうなりますか?

A.

NISAは「個人ごとに年間の非課税投資枠が与えられる制度」であり、名義人が亡くなった時点で非課税枠の利用は終了します。非課税枠を相続人へ引き継ぐことはできません。

Q.亡くなった方のNISA口座は相続人に名義変更できますか?

A.

NISA口座は名義変更ができないため、相続人がそのまま引き継ぐことはできません。名義人が亡くなると、NISA口座での非課税運用は停止され、相続手続きを通じて相続人名義の「特定口座」または「一般口座」へ資産が移されます。

相続後にNISAで運用を続けたい場合は、相続人ご自身が保有するNISA口座で改めて買い直す必要があります。

Q.NISAの相続に関するデメリットや落とし穴はありますか?

A.

名義人が亡くなるまでにNISA口座での運用で得た利益は非課税になりますが、名義人が亡くなった時点で非課税扱いは終了し、資産は相続発生日の時価で課税口座へ移されます。そのため、相続後に発生する運用益は課税の対象となる点に注意が必要です。

また、NISA口座の保有資産は相続税の対象にもなります。

Q.相続したNISA口座の資産を売却する場合、取得価額はどうなりますか?

A.

相続したNISA口座の株式や投資信託を売却する際の取得価額は、被相続人が購入した金額ではなく「相続発生日の時価」が基準になります。これは相続財産として評価された金額と同じもので、移管後に売却する場合、相続時点の価額と売却価額の差額が譲渡所得として計算されます。