京都銀行の「美術研究支援制度」は、京都市立芸術大学の学生が制作された作品を毎年継続的に購入することによって制作者の美術研究費用を支援するもので、優れた芸術の創造・振興に寄与することを目的として2001年に創設いたしました。
購入作品をホームページ上でご紹介することによって多くの方々にご鑑賞いただき、文化・芸術振興の一助になればと願っております。
私の制作は、奥ふかい空間に「入る」という感覚から始まります。現場での写生を目的に一人で森の空間のなかをわざわざ奥の方まで入って行きます。目的地があるというより、通り過ぎていく途中にその場所があります。その場所で写生という行為を通して得る実感が、認識する以前の私の夢や記憶と結びつき、形となった空間を画面に再構築することを試みます。そこに、向かう途中の間の空間にしたいと思っています。
人や背景を描くというより、空間を描くと考えています。何かあるのだけど何もないような、人が見えたり植物が見えたり。全てにはっきりさせない曖昧な空間を目指し、制作しました。
2009年より絵画制作を開始。当初のテーマは「擬態のもつ視覚的効果について」で、制作を通し絵画平面上における「図と地」への理解を深めてきました。
その後、写真を入れ格子状に配した風景画、ポリゴンをモチーフにした絵画の制作などを行ってきましたが、常に重要視していることは「画面内で起こる視覚的効果」です。
今回の作品は、透明度の高いポリゴンのモチーフを、二種類の描画材で描く試みの一作目です。
私の理想の美青年と装飾を構成し、それをモチーフに半立体(レリーフ状)の形式で制作しています。平面でも立体でもないものを、特に質感を重視し、ポーセリンのように見えるよう制作しました。
自然物のもつ線の美しさに興味があり、制作をしています。
私が用いているドライポイント技法とは、銅版画の中でもシンプルで古典的でありながら、非常に豊かな表情ある線を生みだすことの出来る技法です。本技法を通して、線表現の可能性を追求しています。
本作は、森の中にある自然界の様々な要素を、線で捉える事で自然美への接近を試みた作品です。
個々に存在し、それぞれに情報や距離を持つ物が光の明暗のレイアーにまとめられ、腐食法を介して銅板に落とし込まれる自身の方法で整理されることによって、それらを結ぶ新たなイメージを表現しました。
私の作るという行為は新しく何かを生み出すというより、自分の中にある世界の地面にぽつぽつと落ちている「もの」を拾い上げて、現実世界へリアルに存在する「もの」へと送り出すことだと思っています。
そうやって私は自分の世界と現実世界を「やきもの」という直接触れて愛でることのできるものを通して繋げているのかもしれません。
ガラス越しに撮影した写真を、透明なビニールのシートに焼きつけ、さらに染織加工で用いられるプレス加工により、雨粒のような凹凸をつけています。
一枚の写真を見ることは、写された物をじかに見ることとは異なる体験ですが、この作品では、これら2つの体験を、かけあわせたような視覚体験ができないかと考え制作しました。